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蝶と蜘蛛

第59章 生まれた誤解


ステージでは表彰式が行われ、総北からも金城さん、田所さんが登壇した。
そしてついに山岳賞、尽八の番だ。

ステージ上から裕介さんを呼ぶというマイクパフォーマンスを繰り広げ満足げにステージから降りてくる尽八はなんだか清々しい顔をしている。

そしてファンの子を一瞥することもなくこちらにまっすぐやって来た。

「茉璃。獲ったぞ、山岳賞」

赤いゼッケンを掲げ嬉しそうにこちらにくる尽八を見て私は嬉しくなる。
もちろん、裕介さんに山岳賞をとって欲しかった気持ちもある。
でも、幼馴染である尽八が今まで必死に積み重ねて来たものを私は知っている。
だからこそ、どちらが獲ったとしても喜ばずにはいられない。

中学生の頃、部活にも入らずおしゃれをする事に力を入れていた尽八が友達に誘われロードを始めた。
実家のギコギコと音を鳴らすうるさい自転車に乗っていた尽八はいつしかロードレーサーに乗り換え、ロードの世界にどんどん入り込んでいった。
そして私にもロードを教えてくれた。


『尽八、いつの間にこんなに格好良くなったの?』

私がそう話しかけると尽八は驚き少し顔を赤くした後、いつものように話し始める。

「俺が格好良いのは昔からだ!お前に出会った幼稚園の頃にはもう完成されていただろう!?」
『そうだったっけ?』

私が笑うと先ほどまでのおちゃらけた表情とは一転、真剣な顔をしてこちらに向き直った。

「本当に、ここまでやってこられたのはお前のおかげでもあるんだぞ、茉璃。」
『え?』

なんのことかわからずキョトンとしていると尽八は私の腕をひき優しく抱き寄せた。

「わからなくていい。でもこれだけは言わせてくれ。ありがとう、茉璃」
『尽八…おめでとう』

私も尽八の背中へと腕を伸ばし軽く抱きしめた。
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