第1章 玉虫色の彼
夏休みが明け、久しぶりに登校をしたある日。
困ったなぁ。なんて考えながら今目の前にいる先輩へと言葉をかける。
『えーっと…あの、困ります』
「なんで?いいじゃん!」
私は今、総北高校の裏門坂にいる。
なぜこんなところにいるかというと、学年2つ上の先輩に呼び出されてしまったからである。
この先輩曰く、新入生として入学してきた私を見て一目惚れをしてくれていたそう。
そして一回でいいから付き合ってくれないかと懇願されている最中なのだ。
なぜかこの総北高校に入学した頃から、このような呼び出しが増えてしまった。
その為、入学から半年ほどですっかり学校中では有名人なのである。
今回もいつも通りお断りしようと思っていた。
しかし、この先輩は少々タチが悪かったようだ。
『何度もお伝えしている通り、先輩とお付き合いをすることはできないんです。』
「今、彼氏いないんだろ?だったら付き合ってくれてもいいじゃねぇか!」
何度も断っているにも関わらず諦める様子がない。