第37章 あの頃のあなた
終業式後は3年生の先輩方の卒業を祝うために部室の飾り付けをしていた。
もちろんそこには裕介さんもいるわけだが全く会話がない。
その私たちの異様な雰囲気に金城さんや田所さんなど私たちの交際を知っている方々は少々気まずそうにしている。
皆さんに気を使わせて申し訳ないので参加は辞退しようかとも思っていたが先輩方の熱い要望で私も参加することにしたのだ。
参加するからにはいつまでも暗い雰囲気でいるわけにもいかない。
私はなるべく裕介さんには近づかないようにしながら明るく振る舞うことにした。
「茉璃ちゃん!俺と付き合ってくれ!」
皆さんが盛り上がっている中で急に告白して来たのは3年生の白岩先輩。
その瞬間、部室の中全員が私たちに注目する。
私がどう断っていいのかと困っていると裕介さんが急に声をあげた。
「ちょっ、そのこいつ付き合ってる奴が…いる、ショ…」
「なっ!なんで巻島がそんなこと知ってるんだ!」
「そ、それは…」
裕介さんが困っているのを黙って見ていられず私は思わず裕介さんの横に並んだ。
『あ、あの!私、その…実は先輩方には話していなかったんですが…私がお付き合いをしているのは…』
「お、俺ショ!」
顔を真っ赤にしながら先輩に向かって先輩にそう宣言してくれた裕介さんを見ていると初めて出会ったときのことを思い出す。
あの時、裕介さんが私を助けてくれなければこうして付き合うこともなかった。
(私、このままでいいのかな…?)
何も話してくれていなかったことを怒っていないわけではない。
でも、裕介さんを好きな気持ちに変わりはない。
裕介さんと別れたいわけでもない。
(それなら…私は…)
「まさか、学園のマドンナがお前と付き合うわけねえだろ!」
「面白い冗談だな!」
『巻島さんですよ』
「へ?」
『私がお付き合いしているのは、横にいる巻島裕介さんです』
「じょ、冗談だよね?」
『冗談じゃないです』
私の言葉に部室内の空気が静まり返ってしまったが、今はもうそれでもいい。
私は今のこの気持ちを裕介さんに伝えたい。
『裕介さん、あとでお話があります。お時間もらえますか?』
「あ、あぁ…わかったショ…」
ちゃんと伝えよう。
今の私の気持ちを。