第36章 戸惑いの合格通知(巻島目線)
何度も一緒に登ってきた峰ヶ山。
今日はなんだか足取りも重く普段より登りがキツく感じる。
茉璃もいつもよりローペースだ。
山頂駐車場へ着くといつもの腰掛石へと腰を下ろす。
そして俺は覚悟を決めて口を開いた。
「実はだな…まだ誰にも言ってないんだが…イギリスの大学からこの前合格通知が届いたショ」
俺の突然の告白に茉璃は何を言っているのかわからないという戸惑いの表情を浮かべた。
しかし俺はそのまま話し続ける。
「イギリスにいる兄貴から仕事を手伝いながら向こうの大学に通わないかって言われててな。実は願書を送ってたショ」
そこまで言うと茉璃はポツポツとか細い声を上げた。
『えっと…イギリスってことは…入学は9月?…じゃあ…裕介さんは9月で部活も退部して、卒業前倒しでして…総北から…日本からいなくなっちゃうんですか…?』
今にも消えてしまいそうなか細い声は震えていて、顔を見なくても彼女が泣いている事がわかる。
『な、んで…なんで今まで一言も…何も言ってくれなかったんですかっ…?』
「すまない、ショ」
謝るばかりの俺に彼女は顔を伏せたまま立ち上がりロードに跨った。
「っ!茉璃!」
名前を呼び引き止めようとしたが彼女はのその場を立ち去っていってしまった。