第33章 2人きりのクリスマス
12月25日。
今日は朝からソワソワしていた。
午前中は部活だが午後は巻島さんとデートの予定があるからだ。
(あぁ、浮ついてちゃダメだ!とりあえず午前中は部活に集中しなきゃ!)
そう思いながらも顔は少しにやけてしまう。
「茉璃。にやけてないで早く支度しなさい!部活に遅れるわよ!」
母のその声にハッとしながら部活着に着替える。
「それじゃあお母さんたちは東堂さんの所の旅館に行ってくるから、戸締りしっかりするのよ?」
そこまで言うと母はこちらへ近づいて来て私の耳元で
「巻島さんの所の裕介くんとデートなんでしょ?楽しんでね」
とこちらにウインクをしてくる。
そんな母を見て父はなんだか不思議そうな顔をしている。
「さ!あなた、早く行きましょう!」
母はそう言いながらウキウキとしながら父と一緒に家を出て行く。
毎年、年末近くなると尽八のご両親が経営している旅館に家族で泊まりに行くのが恒例となっている。
しかし今年は部活があるしクリスマスはできれば巻島さんと過ごしたいと思っていたので私は留守番をすることになったのだ。
父は最初こそ残念そうだったが、なんだかんだで父と母は未だにラブラブなので久しぶりのデートだと今は浮き足立っている。
『よし、私も部活に行かないと』
私は急いで支度を終えると玄関のドアを開いた。