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夢幻の如く

第12章 憂鬱1


まさかの天主からの外出禁止令。
しばらく文句を言っていたが、信長は、フフンとしたり顔で聞く耳を持たない。
先手を打たれた形になったのだが、私としては外出禁止を受け入れるしかなく、それなら、護衛達と天主の隅々まで見てやろうと笑みを浮かべた。

「あつ姫、また何かする気か?」

「……‼︎ べ、別に、何もしないよ。あっ、如月が来るよ」

しっかり信長に見られていたが、別に悪さをする訳ではないが、何となく罪悪感を感じ、話を逸らした。

「朝餉をお持ち致しました」

頃合いよく如月が来て、とりあえずはホッとしたのだが、朝餉の膳を見て、目を見開いた。

「何……これ……?」

私が驚いていると、信長は、膳を見て口角を上げ、文机を横に押し退けていた。
如月は、信長の前にも膳を置いたのだが、私の前には、朝餉の膳が沢山並べてあったのだ。

「父上、一汁一菜じゃないの?」

「は……? それだけだと腹が減るだろう。他の奴らはもう少し少ないがな。お前の膳が多いのは護衛達がお前に食べさせたくて作ったのだ。まあ、それにしても量が多いな。無理をして食う事はないぞ」

「……うん」

確かに私の護衛達が作った朝餉に間違いない。嫌いな物や食べられない物は省いてある。
だが、いくらなんでも作り過ぎだ。
既に食べ始めている信長の膳の三倍はある。
(ネギ味噌とマスの塩焼き、具沢山の味噌汁、焼き鳥に大根の味噌漬け。ほうれん草の胡麻和え。マス? ああ、鮭が調達出来なかったからマスか。卵焼きには大根おろしが添えてある。……ん? ちょっと待て? 卵焼きがあるのに、目玉焼きまである。しかも私が好きな両面焼きにしてある。朝から贅沢過ぎるだろ。全く……)
この時代に無い料理に溜め息しか出ない。
しかし、他の誰かにこの料理を見られる訳にはいかない。
(完食して証拠隠滅か……)
仕方なく食べ始めたが、信長は既に食べ終え、私をジッと見ていた。

「父上、何? 見られてると食べ辛いんだけど」

「いや、お前と二人きりで飯を食うのは久しぶりだなと思ってな」

「……?」

パクパクと食べながら、信長の言葉に首を傾げた。朝食か夕食のどちらかは必ず一緒だった。
それは、どんなに忙しくても、私が最優先だと信長は口癖のように言っていたからだ。
だから、何故『久しぶり』などと言うのか分からなかった。
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