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夢幻の如く

第11章 帰還3


「あつ姫?」

「パパ……? 姫、また寝ちゃった?」

「ああ、少しだけな」

目覚めると、私は信長の腕の中にいた。
また心配をかけてしまったようだ。
私の頬を撫でる信長の顔は、安堵していた。

「ごめんなさい。……もっと気を付ける」

「あつ姫、お前が謝る事など何もない。さあ、そろそろ朝餉の時間だ」

信長は、私を抱き上げ、文机を挟んで座らせた。
いつも心配ばかりかけるが、この時代に来てからは、信長の過保護ぶりが発揮され、私は若干引き気味だ。

「父上、姫はもう子供じゃないよ。朝餉は、自室で食べる」

「駄目だ。これから朝晩は、俺と一緒だ。昼餉は、軍議の都合があるから仕方ないが、お前が、この城の生活に慣れたら、昼餉も一緒だ」

「……相分かった」

かなり不満に思ったが、信長が余りに強気で言うので、嫌とは言えなかった。
よく考えたら、小さな頃から、父信長の過保護は激しかった。
幼稚園という所には行った事がないが、小学校から中学までは、世界中の良家の子女が集まる全寮制の学校に行っていた。
だが、全寮制とは名ばかりで、その学校は自宅の隣にあった。
無論、信長が私を人目に晒さない為に作った学校だ。しかも、私だけ通学で校長室の隠し通路を使っていた。
世界中の金持ちの子女が集まる為、規律も厳しく、全員偽名で変装していたので、実際外で会っても分からないようにするという徹底ぶり。
それが功を奏してか、私が卒業した後も入学希望者が後を立たないらしい。
まあ信長曰く、学校に集まる子女は人質だと。
何百年経とうが、織田信長は織田信長なのだ。
この先、この時代の信長の行動が予測出来ないと小さく溜め息を吐いた。
と、信長が信じられない言葉を吐いた。

「あつ姫、数日間は、天主から出る事を禁ずる。天主は広いゆえ、この中なら自由にして良い」

「えーーーッ! やだ!」

「駄目だ。久しぶりに親子水入らずだ」

いや、如月も居るし、私の護衛だけで五十人近く居る。しかし、信長にとって、その者達は、存在しない者とみなしているのだった。
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