第5章 二度目
苦笑して自分のポッドへと近付き、ハッチを開ける
座席に座ってハッチを閉じようとした時、正面にベジータの足が見えた
いつもならさっさとポッドに乗るのに
どうしたのだろうと身を乗り出すと、こちらを見下ろしている彼と視線がぶつかった
「どうかしましたか?あ、そういえばベジータさんと2人で行くのは初めてですね」
「そうだな」
「?……」
ベジータはまだその場を動こうとしない
何か話があるのかと彼を見上げていると、ベジータが両腕をこちらへと伸ばした
なんだろうと思っている内にその手が頬に触れる
「ベジータさ……!?」
言葉の途中で彼に唇を塞がれた
5秒くらいで顔を離し、ベジータが後ろに引く
「な、ななな……何を……!?」
「お前に返したぞ」
「な、何をですか!?」
「ラディッツの……だ。確かに返したぞ!」
そう言い捨てるとベジータは隣のポッドへと乗り込んだ
ハッチが閉まる音を聞いて座席に背を預ける
ラディッツものよりも少し柔らかいベジータの唇
ミズナは唇に指を触れ、ゆっくりと息を吐いた
『……何をしている。行くぞ』
「っ……は、はい!」
スカウターから聞こえたベジータの声に慌ててハッチを閉める
行き先を打ち込むと、ポッドが軽く揺れた
カウントが0になるのと同時に目の前の景色は発着室から宇宙に変わっていた
前方にはベジータのポッドが見える
ミズナは座席に足を乗せ、腿を抱える様に腕を回した
(あ、あんな事されて、しかもこれから2人きりで行動……でも、いつも通りにしないと……)
そうは思うものの出来る自信がない
『ラディッツのキスだ。確かに返したぞ』
ベジータは確かにそう言った
(返すんならラディに返せば良いのに~!……あ、そんな事したら更に悪化するだけか……)
この事はラディッツには言わない方が良いだろう
ミズナは視線を上げ、前方のポッドを見た
今、ベジータは何を考えているのだろう
目的の星までは1ヶ月程度掛かる
もう装置を使って眠っているだろうか
(起きててもお腹が空くだけで良い事ないからなあ……私も寝ちゃおう)
そう思い、足元の機械を操作した
設定ボタンを押して間もなく、眠気に襲われる
(次にラディの顔を見るのは2ヶ月以上先……か……)
ミズナはそんな事を考えながらゆっくりと目を閉じた