第3章 ストレート
非番の戦闘員が行き来するC地区の廊下
その一角に大勢の者が集まっていた
中心にいるのはミズナ
窓枠に腰掛け、声を掛けてくる男に笑顔を見せていた
その様子を自室のドアの横に寄り掛かって眺める
自分にとって見ていて面白い光景ではなかった
何故なら、好きな異性が他の男に囲まれているのだから
そのせいで腹立たしいとしか感じない
「……」
少しの間、その様子を眺めて部屋へと入った
機械的で殺風景な室内を歩き、ベッドサイドの棚に視線を向ける
棚に置いていた水を手に取るとベッドに腰を下ろした
大きな星への侵略を終えたばかりで長期の休みを貰っている
ミズナも新しい小型ポットが完成するまでの間、休みを与えられていた
この船に乗る唯一の女性なのだから人気があるのは仕方がない
だが、あのように男に囲まれているミズナを見るのは面白くなかった
「……くそっ……イラついても仕方ねえだろうが」
そう呟き、ラディッツは溜息をついた
行動を起こさないとミズナは他の男の物になる
だが、自分の立場を思うと彼女に思いを伝えるのが怖くなった
下級戦士とエリート戦士で彼女との戦闘力の差は10倍ある
思いを言葉にした時に、どんな顔をされるか等と考えてしまった
ミズナを諦めたくないが、それには対等に見てもらえるようにならなければ
(まずは戦闘力だよなあ……アイツは15000で俺が1500だから……)
目を伏せたまま考え事をしていると、突然部屋のドアが開けられる
自動でロックが掛かる様になっているドア
自分以外に開けられるのは数えるほどしかいなかった
驚きながらそちらを見ると、ミズナが立っている
「ミズナ……?何で開錠キー知ってるんだ?」
慌てて起き上がり、既に室内へと入っている彼女に顔を向けた
そんな自分に対してミズナはこちらの様子を見て困ったような顔をする
「パネルの操作をしているのを見て覚えてたから」
「……で、何か用か?」
「シャワー、貸して欲しいの」
「シャワー……?自分の部屋に付いてるだろ」
「それがね、壊れたみたいで水しか出ないの」
「修理班は?」
「急がしいから時間が掛かるって」
「そうか。じゃあ、好きに使え」
「ありがと」