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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第6章 幕間


邂逅まで



灰色の雲が空を覆い、僅かながら雨の匂いがする。
空を見上げながら天狗の面をかぶった男、鱗滝は小さく息をついた。

山の方を見れば、時折鳥が山肌から飛び立っていくのが見える。おそらく、最近迎えた弟子が修行をこなしているのだろう。
自分と同じく鼻が利く彼ならば、もうすぐ雨がやってくることに気づき戻ってくるかもしれない。

彼を迎える準備をするために小屋に戻ろうとすると、自分に向かって一羽の鳥が、ふらつきながら飛んでくるのが見えた。
その鳥を見て、鱗滝の眼が面の下で見開かれる。それは足に手紙をつけた【鎹鴉】である。だが、彼が驚いたのはそこではない。

(何故・・・何故奴の鎹鴉がここにいる・・・?)
彼が驚いたことは、その鎹鴉の存在だった。

鱗滝はあわてた様子で鎹鴉から手紙を受け取る。すると、鎹鴉はそのままぐったりと彼の膝に頭を垂れ、そのまま動かなくなってしまった。

彼にあてられた手紙には、このようなことが書いてあった。

拝啓:鱗滝左近次へ
よう、生きているか?相も変わらず珍妙な面を被って偏屈かましてるのか?それとも、俺がくたばったと思って悲しんで・・・は、いねぇだろうな。
だが、お前がこの手紙を読んでいるころには、俺は本当にくたばっていると思う。人間としてくたばるか、鬼としてくたばるかはわからなんがな。
手紙なんざ柄じゃねえから簡潔に告げる。もし、もしも俺がくたばったらお前の所に俺のガキを送る。どうか面倒を見てやってくれ。
バカで単純で要領が悪いが、俺ができることのすべてを叩き込んである。もしかしたら、鬼殺の剣士になるなんてほざくかもしれねえ。
けれど、俺にとってあいつは全てだった。柱の名を棄てても、あいつだけはきちんと育ててやりたかった。
身勝手な頼みで悪いが、俺の最期のわがままをどうか聞いてやってくれ。今まで本当にすまなかった。
敬具:大海原玄海

追伸:もしお前の所にもガキがいたのなら、ぜひとも仲良くさせてやってくれ。

手紙の書き方からして破たんしたものだったが、それには彼の不器用な思いが豪快な字で刻まれていた。
それに目を滑らせていた鱗滝の手が細かく震える。面の下の表情は伺えないが、何とも言えない気持ちが彼のすべてを包んでいた。
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