第2章 王子
ルシエトは労働者を連れ、木の陰に腰を下ろしていた。
「大丈夫か?飲め」
持っていた水袋を渡してやる。
落ち着いたところで、ルシエトは男に
家族の事、労働の事、暮らしぶり、
税金、政治、衣食住、不満な事、
色々と尋ねた。
エジプトの民も不満はあるだろうが、
侵略した国から連れて来た労働者は
暮らしも厳しく、不満も多いのだと感じた。
(大切な労働力がこれでは…)
「お前を俺の側にあげてやることは出来ない。
だが、労働待遇は必ず改善させてやる」
(まずは、労働者には飯を配給させ、
休息を与えるとこだ)
「今日はコレをもって、もう家に帰れ」
ルシエトは純金にサファイアの付いた指輪を抜くと、男にそれを握らせた。