第3章 カラ松の記憶
「じゃあ、もしかして…」
「私のことを忘れてしまうんです。でも、兄弟をなくす悲しみは、痛いほど分かります」
○○の手が震えている。
「○○さんは、カラ松とどういう関係なの?」
「結婚の約束をしました。この指輪と同じ物を、あの人も付けています」
おそ松たちは、顔を見合わせた。
「○○さん…。本当に俺たちが悪かった。勝手なことだと思うけど、カラ松は返してもらう」
○○は泣きじゃくりながら、薬をおそ松に渡した。見ればデカパン印の薬だ。
「ありがとう。ごめん…!!」
カラ松を呼び出す。
「帰ってくれって言っただろう!」
「とりあえず、これ飲んでよ」
「なんだ、それは」
「お医者さんからもらった薬よ」
○○が答える。
「なんだ、そうか」
素直なカラ松は、薬を手に取った。○○はカラ松の顔を両手で触れ、口付ける。
「どうしたんだ、○○?」
「……どうか、幸せに…」
「何を言ってるんだ?お前と夫婦になるのが、俺の幸せなんだぞ」
「……うぁあああああん!!わぁああああん!!」
「な、なぜ泣くんだ?!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
○○は戸惑うカラ松に薬を飲ませ、喫茶店の中に走り込んだ。
少しして、カラ松はキョトンと辺りを見た。
「ん?ブラザーたち。どうしたんだ、こんなところで」
「カラ松!!本当にごめんな」
「カラ松兄さん、ごめんなさい!」
「待て、待て!話が全く見えないんだが」
「あの時、助けなくてごめん!!」
「物を投げて、ごめんなさい!」
「…ああ、あれか。あれはひどかったぞ。もうあんなのは、ごめんだからな」
「もう、二度としないよ!」
その時、喫茶店の中から泣き叫ぶ声が聞こえた。
「あ………」
「誰か泣いてるな。よほど悲しいことでも、あったんだろう。かわいそうに」
喫茶店を見て、そう言った。
「カラ松。あの喫茶店、覚えてないか?」
「いや、初めて見るが…。どうかしたのか?」
「………俺たち、本当にクズだよな」
「○○さんに、悪いことしたな」
「○○さん?誰だ、それは。……なんだろう、心がキュッとなる」
「とにかく家に帰ろう」
カラ松を真ん中にして、肩を組んで家路についた。