第3章 カラ松の記憶
「ひとつ聞かせて下さい。なぜあの人は、あんなひどい状態になったんですか?」
「それは…」
一松が言おうか迷っていると、おそ松が言った。
「俺たちがあいつに…。棒に縛りつけられてたあいつに、物を投げたんだよ…。それが全部頭に当たって…」
「助けるどころか、物を投げた?!信じられない!」
「だから、謝りに来たんだよ!」
そこへゴミ出しに行っていたカラ松が、帰って来た。
「○○、何を騒いでるんだ?」
「カラ松!!」
おそ松たちがカラ松を囲んだ。
「カラ松、家に帰ろう!母さんも心配してるから!」
「あの、どちら様ですか?俺の家はここですけど………う…!」
カラ松が頭を抱えてしゃがみこんだ。すかさず体を支える○○。
「大丈夫?!」
「…………さい」
「え?」
「誰かは知らないけど、嫌な感じがする…。怖いんだ…。帰って下さい」
「そんな…!俺たちが悪かったよ!」
「カラ松兄さん、ごめんなさい!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「帰ってくれ!!もう、来ないでくれ。俺は今のこの幸せを、壊されたくない」
「カラ松…!」
「……今日のところは、帰ろう」
「おそ松兄さん!」
「カラ松の意思を、聞いただろ?記憶が戻った状態じゃなきゃ、いくら謝っても意味ないしな」
戸惑うチョロ松たちを外へ押しやるおそ松。外から声が聞こえる。
「でも、おそ松兄さん!カラ松兄さんは家族なんだよ!」
「わかってるよ!俺だって、弟の一人なんだ!でも、あれだけひどいことをしたんだ。こうなって当然だろ」
「うぇええええん!カラ松兄さぁああん!!本当にごめんなさいぃいいい!!」
泣き出す十四松とトド松。一松も泣き出した。
「カラ松兄さん!!俺のこと殴っていいから、帰って来てよ!!」
喫茶店の中では、カラ松も涙を流していた。
「なぜ涙が出るんだろうな…」
○○は外へ出て、おそ松たちを呼び止めた。
「なに、お姉さん。俺たちを笑いに来たの?」
○○は首を横に振って、ポケットから薬びんを出した。
「これは、あの人の記憶を戻す薬です」
「なんだよ、いいもの持ってんじゃーん。そういうのは、早く出してくれなきゃ!」
「ただ、意識をなくす前の記憶が戻る代わりに、意識が戻った後のことは忘れるんです」