第4章 記憶の彼方の温もり
「今まで忘れてて、すまなかった。あの時もずっとこうやって、体を拭いてくれてたんだな。おかげで俺は元気になって、兄弟たちとも仲直りできた。兄弟たちの本当の気持ちを知ることができたんだ」
ふぅ、とため息をつく。
「あの時俺は、兄弟たちには必要ない存在なんだと言われたような気がしていた。でも、違ったんだ。ふざけていると思っていたそうだ」
数日後、体を拭き終わったカラ松は、○○の手を取る。
「ああ、この温もりだ。間違いない」
見ると、指輪があった。
「○○。今度こそ、結婚しような。俺、○○とならやっていける。いや、○○じゃなきゃ嫌だ。だから、早く元気になれよ。思い切り、抱きしめてやるからな」
○○の手が、ピクッと動いた。
「○○!!」
ゆっくりと目を開ける○○。
「…………カ…ラ………ま……」
「ああ、俺だ!カラ松だ!俺はここにいるぞ!○○のことを、思い出したんだ。もう悲しませたりしない。」
○○は嬉しそうに微笑んだ。
「今、先生を呼んでやるからな!」
ナースコールを押し、○○の意識が戻ったことを告げた。
主治医が来て、呼び掛ける。
「○○さん、分かりますか?」
「は……い」
弱々しいながらも答える○○。
看護師が血圧や体温を計り、主治医に告げる。
「数値が正常に戻っていますね。まだ油断は出来ませんので、泊まり込みで様子を見てもらえますか?」
カラ松には願ってもない申し出だった。
「もちろんです!」
その日から、カラ松は一生懸命看病し、リハビリにも付き合った。そのおかげもあって、○○は日に日に元気になり、普通に歩けるようにもなり、一般病棟に移ることができた。
「○○」
「カラ松、おはよう」
「グッモーニン、マイスウィート」
カラ松一緒に、カラ松の母親と父親も見舞いに来た。
「こんにちは」
「こんにちは」
「前はこの子がお世話になったそうで、ありがとうございました」
「いえ、そんな…」
「聞けばカラ松と結婚の約束をしていたとか」
「はい、そうです」
「息子をよろしくお願いします」
「頭を上げて下さい。私こそ、よろしくお願いします」