第4章 記憶の彼方の温もり
「えー!ここのオムライス、めっちゃおいしいって評判だったのに…!」
「ショックー!」
「別のとこ、探そう」
スマホを取り出し、画面を見始めた。
「…あれ?これって、ここのことかな」
「なに?」
「赤塚区の喫茶店経営者○○さん、昨日の夜に歩道に乗り上げた車にひかれて重体だって」
「こわぁ!」
「あ、間違いないよ!オムライスが評判の店って書いてある!」
カラ松は走り出した。
「あ、おい!カラ松!」
追いかけようとするチョロ松を、おそ松が止めた。
「カラ松に任せようや」
「兄さん…」
「6人も行ったら、病院にも迷惑だしな」
病院に着いたカラ松は、受付に立った。
「あの、昨日車にはねられた女の人が、ここに運ばれませんでしたか?!」
「○○さんですか?」
「はい!その人です!」
「3階B棟のICUです」
「ありがとうございます!」
エレベーターに向かおうとしたが、たくさんの人が待っていため、階段を昇る。
その時上から師長が降りて来て、カラ松を見た。
「あら、カラ松君だっけ?」
「あ、はい」
「○○さんのところに行くのね?」
「はい!」
カラ松の目を見た師長は、カラ松の肩に手を置いた。
「言っちゃあなんだけど、覚悟したほうがいいわよ、ひどい状態だから。本当は家族しか入れないけど、あなたは○○さんの家族みたいなものだから、案内してあげるわ。ついてらっしゃい」
師長について行き、ICUに入る。
「!!」
カラ松は言葉を失った。そこにいたのは、管だらけで包帯だらけの○○だった。
手を取るカラ松。その時、カラ松の中に眠っていた記憶が、よみがえった。
「こんな大事なことを、忘れてしまうなんて…。この手が、俺の体を拭いてくれてたんだ…!○○、今度は俺が、君を助ける番だ」
「そう言うと思ったわ。教えてあげるわね」
師長は体の拭き方を教えてくれた。早速やってみる。
病院着をはだけると胸があらわになったが、恥ずかしがる余裕など、今のカラ松にはなかった。傷や点滴の場所に触れないよう、一生懸命に拭いていく。
カラ松がちゃんと出来ているのを確認すると、師長はそっと出て行った。
それに気づかないまま、懸命に体を拭くカラ松。