第4章 記憶の彼方の温もり
一松も、おそ松たちも泣いていた。
はっとして顔をあげるチョロ松。
「そうか!デカパンのところに行けばいいんじゃないか!」
「ああ!」
「でも今日は、もう遅いしな。明日行こう」
「もう泣くなよ、カラ松」
「兄さんだって…」
トド松がパンパンと手を叩いた。
「はいはい、そこまで。お風呂行こう?」
皆でいつもの銭湯に行く。
鏡の前に立ったカラ松は、自分の裸の体に手を当てた。何か思い出しそうで、思い出せない。薬による記憶喪失のため頭痛は起きないが、大事な何かを忘れているのは確かだ。
暖かい気持ちになる、無くした記憶。指輪を見るたび、心が満たされていく。その反面、思い出せないのが悲しい。
「愛してる…」
自然に出てくる言葉。会いたい、抱きしめたい。心がその人を呼んでいる。記憶を無くしても、心のどこかで覚えている。その温もりを、愛しさを。
次の日、六つ子全員でデカパンの研究所に行った。
「ホエホエ、チミたちが揃って来るなんて、珍しいダスな」
「前に女の人に、記憶が戻る薬を渡しただろ?」
「ホエ?…………ああ、あれダスか。ずいぶん悲しそうな人だったダスな」
「それを飲んだカラ松が、その人を忘れてさ。思い出す薬、ないかな」
「彼女に渡した物と同じ物なら、あるダス。これを飲めば、チミたちのことを忘れてしまうダスよ?」
「それはダメだ!俺たちもあの人も、幸せになれなきゃ意味ない!」
「何かの拍子に思い出すこともあるかも知れないダス。薬の力より、愛の力ダスな」
「思い出せ、クソ松!」
「そう言われても…」
十四松が提案を出した。
「写真見せたら?」
「写真、ない」
あの時カラ松を連れて帰る途中に、どこかへ捨ててしまったらしい。
「病院で再現するとか」
「病室なんて、貸してくれないぞ?」
「だから会いに行こうってば」
トド松の意見に賛同したおそ松たちは、○○がいる喫茶店に向かった。
「あそこだ!」
だが喫茶店はシャッターが閉まっていて、張り紙があった。
『最高のオムライスに出会うため、旅に出ます』
「え…」
「オムライス…?………!!そうだ。俺はここで、オムライスを作っていた。その隣にはいつも誰かがいて…。…………ダメだ、思い出せない!」
通りかかった人たちが、喫茶店の張り紙を見た。