第7章 紅玉の嫁入り
信じられない言葉が聞こえた。
「国民を、奴隷にするだって……?」
それが、仮にも国を治める王の言葉なのか。
「そんなこと、できるはずがない。国民なくして国は成り立たない。そんな国、終わってる……」
私の声は震えていた。信じられなかった。国民を売る王など聞いたことがない。
「でも実際にそういう条約を結ぶことになってる。そのための紅玉の結婚だしな」
ジュダルは言った。
「ま、アブマドがクズなのは本当だけど、こういう風に仕組んだのは煌帝国だぜ。既に海洋権、制空権、国土の利権を担保として差し押さえてる。ああ、最近じゃ通商権もだったかな」
「なんだよそれ……」
言葉をなくすとは、まさにこのことである。
「それが政治ってもんだろ。駆け引きとかめんどくせーけどよ」
「そーだけどさー」
これがこの世界の歴史の流れなのだと考えればどうしようもないことだ。第一に、私にそれをどうこうする力などない。しかし、
「紅玉さんに、そんな所に行ってほしくないなあ」
これが本心なのだ。友達として、紅玉には幸せになってほしい。
「俺としても、迷宮攻略者の紅玉が他国に嫁ぐのは嫌なんだけどな。紅玉は武人として才能あるし」
わざわざ戦力を他の国にやることねーじゃん!って思うわけよ、とジュダルは言った。
そして私たちは、ふたり同時に溜め息をついたのだった。