第3章 新しい生活
誰もが寝静まった夜。今聞こえるのは、布が擦れる音と寝台が軋む音だけだ。
「せっかくなんだからさ、気持ちイイことしようぜ?」
甘く甘く囁く。
「な、ルシア」
セオリー通り、キスから始めようと、顎に手をかける。
その途端、拘束していたはずの体がぐるんと回った。
ガシィッと上体を抱きつかれ、思わずびっくりして身を固くする。
恐る恐る見ると、ルシアはすやすやと健やかなる寝息を立てて眠っていた。
萎えた。
一気に萎えた。コイツに遠慮してやる筋合いはないが、せっかくイイ雰囲気つくってやったのに、それをぶち壊されて脱力してしまった。
はあっと溜め息をついて寝る体勢に入る。コイツを蹴落としてひとりで寝台を使ってもいいが、それをする気力ももうなかった。
俺を抱き枕にして気持ちよさそうに眠るコイツを見てると、それでもういいような気がしてきた。
そういえば、誰かとこうして眠るのは初めてかもしれない。
俺は自分以外の体温を心地よく思った。小さいときからーー少なくとも物心ついたときから、ひとりで寝ていた。組織が親みたいなものだったが、アイツらが俺を駒としてしか思ってないことは明白だったし、俺も俺で戦争が好きだからアイツらに協力してるようなもんだ。そこに愛なんてないし、当然だと思っていた。
けれど、こんなふうに眠ると、今までぽっかりと空いていた、いつの間にか忘れていた穴が埋まっていくように感じた。
よくわからないけれど、これもいいかもしれない。
目の前にある体温を逃がさないように抱きしめて、俺は眠りに落ちた。