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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第2章 とにかくパンが嫌い




ベポから情報を教えてもらった帰り道、ローは早速、商店街のパン屋の場所を確認しようと足を運んだ。

駅から10分ほど歩いた場所にあるそのパン屋は、場所だけで言えばローも知っている店だった。

ローの住むマンションは、ここからさらに5分ほど歩いた場所にあり、パン屋からは目と鼻の先である。
近所なのにまったくパン屋の存在を知らなかったのは、ローの人生において、パンが不必要なものであったから。

ベーカリー バラティエ。
商店街の中ほどに位置したその店は、夕飯の買い物にきた子連れ客や、ローと同じく学校帰りの学生で賑わっていた。

個人経営の店にしてはそれなりの広さがあり、店の隅のイートインコーナーでは数人の客がコーヒーを啜りながらパンを食べている。
客の中にはコーヒーだけを飲んでパソコンを開いているサラリーマンもいるので、コーヒー目当ての客もいるのだろう。

コーヒーが好きなローとしては、茶請けにパンを選択する気持ちがわからない。
クッキーやケーキならばともかく、あんなにモソモソした物体と一緒にコーヒーを飲んだら、せっかくのコーヒーの後味がすべて吸収されてしまいそう。

ちなみに、ローはコーヒーと白飯を一緒に食べられるタイプである。

(やっぱり他を探すか……。)

パンを食さなくても生理的に受けつけられないような気がして、バラティエから足が遠のきかけたその時、店の中から元気の良い声が聞こえてきた。

「お待たせしました、カレーパン揚げ立てでーす!」

溌剌とした声に反応して視線を戻すと、店の奥から出てきた店員が鉄板とトングを手にカレーパンを並べていた。
黒いハンチング帽を被っていても、彼女の顔はすぐにわかってしまう。

彼女の声を初めて聞き、食い入るように見つめた。

コックシャツに身を包み、幸せそうな笑顔を浮かべているのは、毎朝観察していたあのレッサーパンダだったのだ。



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