第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
「なんで?先生にその気がなければ意味ないんじゃないの?」
「………咲は、ちょっと特殊だから」
「何、特殊って」
「基本、自分に気がある子なら大歓迎なんだよ、あれ」
「━━━━っ、はぁ??」
「ほら、未琴さんけっこうわかりやすいから」
わかりやすい?
未琴が先生に気があるなんて、つい最近まで全然気付かなかったあたしはなんなのよ。
「最っ低」
「やだなぁ、その目。俺は違うよ?」
「今までたくさん女の子の血貪ってきた誰かさんに言われても説得力ない」
「それはほら、不可抗力ってやつ」
「何が」
「だって飲まなきゃ死んじゃうんだもん」
「死んだ方がいいんじゃない?」
「……それ酷い凛ちゃん。さすがに翔琉くん傷付いた」
「傷付いたのは、未琴!!」
「記憶ないから大丈夫でしょ」
「記憶消せば万事解決、なわけないでしょうっ!?」
「記憶消さなきゃ消さないで残酷だよ?咲、見境ねーもん」
『もん』て。
何がもん、だ、何がっ。
咲ちゃん先生の爽やかイメージがガッツリ崩れてく。
見境、って。
なんなのよ。
吸血鬼ってみんなそーなの?
「吸血鬼の餌なんかにさせないんだからっ」
「行くの?今?」
「………」
階段へと一段、足を踏み出したところで。
余裕いっぱいに翔琉が声をかけた。
「うん、正しい選択だよそれ、凛ちゃん」
踏み出した右足はそのまま踊り場へと戻り。
さらにはちょこん、と、翔琉のそばまでたどり着く。
「もとはといえば、全部翔琉が悪いっ」
「えー?」
「全部翔琉のせいなんだからねっ」
「んー、まぁちょっと、反省はしてるんだけど」
「ちょっとぉ?」
「だって凛ちゃん可愛いんだもん。これでもけっこう我慢してるんだよー。俺」
えっへん
なんて。
自慢気に話す隣の黙ってれば美人な男の子。
運命なんて信じて、果たして良かったのかな。
あたしの選択は、間違いだったのかもしれない。
うん。
絶対間違ってる。
とか、心では本気で思うんだけど。
翔琉の隣を譲る選択肢なんて、存在しないのも確かなんだ。