第29章 少しずつ見える本性

新しいナースも他の2人はしっかりと仕事をしている。もう少し様子をみようかな…。

「アン…心配事はさっさと言えよォ？」
『うん、もちろんー。じゃ、親父様の顔も見れたことだしそろそろ戻るn…ッと！』

船が大きく傾いた。波が荒れてきたようで、親父様の部屋についている窓から見える海は暗く、波が高くなっているようだ。

「グララララ…しけてきてらァ」
『みたいだね。様子も見に行かないと。』
「あァ…アンがいる限り、大丈夫だろうがなァ！グララララッ」

親父様はナースに囲まれて、笑っていた。ナースたちを安心させるだだろうか…少し顔が強張っていたナースたちも安心したのか表情が柔らかくなったと思う。

部屋の外に出ると、新しく入った新人隊員たちは初めての光景にびくびくと怯えているか、慌ただしく暴れているかだった。

「こ、こんな嵐見たことねェ！！」
「た、隊長！！」
「狼狽んじゃねェよい！」
「ったく、最近の若ェのは嵐もダメなのかよ。」
「全くだよい」
『そう言う隊長も外に行けない1人ですけどねー。』
「アンか…戻ったのかよい」
『えェ…それよりエースは？』
「た、隊長ォォ！！　エースさんが雨に打たれて海に落ちましたァァァァ！！！」
「「「は？！」」」
「ど、どうするよい！？！」
「こんな嵐じゃ捜索隊もだせねェ」
「ナミュール隊長も遠征でいないしッ！」

私は一目散に駆け出して、船から飛び降りた。ひどい雨で甲板にバシバシと叩きつける大粒で波は穏やかな面影など一切感じさせないほど荒れていた。

『エースッ！！！』

船の下を能力を使い潜っていると、オレンジ色の帽子を手に持ったまま沈んでいっているエースがいた。必死に手を伸ばし、やっとの思いで掴んだ手はとても冷たく…すぐに自身の近くにシャボンを作った。

『エースッ、エースッ！！！』

頬を叩いたり、体を揺すったりしていたら瞼が動き、飲んでいた水を吐き出した。

「あァ…流石に死ぬかと思った…」
『馬鹿じゃないの…ったく。』
「ありがとな…アン…悪かった、から泣くなよ。」
『…ッ先に死ぬなんて許さないからッ』
「おう！」

エースの冷たい体もあっという間に戻っていった。波を使い勢いよく甲板に戻る。空はまだ雨が降り続いていた。