第1章 【長編】雷霆のジェード①(SPN/R18G)
(……疲れる)
あんな夢を見たせいか、舌の根が完全に渇いている。まるで体の水分が一気に蒸発したかのような激しい枯渇感だ。服も乾いているし言うほど発汗していないと思っていたのに、反して肉体は疲弊していたようだ。虚脱感と眩暈に似た視界の明滅が物語っている。果たして水分不足だけで起きた症状であるかは定かでないものの、心身の負担が極限に達しようとしている事に間違いはないだろう。
眠らないでいようとしても知らぬ間に微睡み、夢へ身を投じてしまう。眠らないでいるにも限界があるかと思いきや今のところは睡眠不足を感じず、平生を送っている。眠れぬストレス、眠らずにいて平然と出来ている恐怖、それの板挟みだった。
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は行き付けの店でモーニングコーヒーを購入し、その足でオハイオのホッキング・ヒルズ州立公園を訪れていた。早くも雪解けを始めていた土は水分をふんだんに含みぬかるんでいる。平日ほど人気がないものだが、週末ともなればツアー客でそれなりに賑わっている様子だ。
今日はまさに週末。愛犬を散歩する若い男女や、普段の運動不足を解消するかのように溌剌とランニングに励む男性の姿をよく目にする。寒空に晒されたベンチに座りながら、はコーヒーを啜り、それらの平和を噛み締めていた。
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