第1章 【長編】雷霆のジェード①(SPN/R18G)
(……とはいえ場違いかな)
彼は元より口数が少なく、その感情さえ易々と表に出さない。故にあまり人付き合いが上手くなく、休みだからといって他人と交わらずにこうして独り身を貫いている。職場に友人が居ないわけではないが、どうやらそいつも引きこもりがちで専らテレビゲームに忙しいようだ。
まるで日本と変わらない生活。本来そんな生活を断ち切りたいばかりに渡米したというのに、今や夢に魘され、日本に居たときより環境が悪化している。気に入っている所は毎朝のコーヒーだけで、の生活は悪路を辿っていた。
(……)
ただその何でもない毎日が、平和か混沌かなど考えなくても分かる。だが『例の悪夢』が平和を許してくれそうもないのだ。初めてその夢を見たのは渡米してすぐのこと。最初は生活環境が変わったせいでホームシックにでもなっているのだと軽く考えていた。でもいくら暮らせど改善の余地がない。
それどころか悪夢は何故か『日に日に進行し、毎日ワンカットずつ場面が増えている』。これが何を意味するのかには分からないが、ただこの夢の行く先が怪しくなった今朝の時点で、今までと同じ考えではいられないことは確かだった。
① 終