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星条旗のサブマーシブル(R18)

第1章 【長編】雷霆のジェード①(SPN/R18G)



(どこか身体の筋が吊る感じがする……)
シートに身を任せた瞬間、は体の不自由を感じ取った。身をもって体験するというよりは頭が肉体の硬直をゆるゆると理解していっている。硬直と言い表しても弛緩さえしている気がして、とにかく身体が言うことをきいていないのは確かだ。寝巻きから剥き出しのままの四肢が余りに無防備で、そこに来て己の夢に初めて恐怖心を抱いた。
(……こわい)
暫くして電車は発車し、車窓はまだまだ地下を走っているのか暗闇に包まれている。向かいの窓に映る自分の顔が強ばっていて、よくよく楽観的には事態を飲み込めない精神になってきていた。
(……こわい)
電車は速度に乗り、音も揺れもないまま、ただ車窓の外が素早く過ぎていく視界の情報から異常を認識していた。何かがあるわけでもないが、何かがあった時が恐ろしかった。目に見えない『不自由』という恐怖がの精神をじわじわと侵していく。
(……目を覚ませ)
は唯一自由が利く瞼を震わせ、涙袋とそこを力一杯くっ付けた。睫毛が濡れる微かな感覚すら煩わしい。あららぐ自分の息遣いが恐ろしい。鼓膜を刺激する男性特有の低い喘ぎが自分のものでないような気がするほど情緒と感覚が揺さぶられる。それが薄らいでいく意識の中で遠ざかっていき、拳に汗握る頃には夢から現実へと身を引いていった。



最悪の目覚めだ。携帯端末のアラームが起床時間を報せる時刻はまだまだ先。今は深夜の二時を回っている。がベッドへ身体を預けたのは長針と短針が揃って真上を向いた頃。つまり二時間程度しか眠れていない。意識を手放して直ぐにあの夢を見た記憶があったので全く眠っていないに等しかった。
「……」
は艶のある黒髪を無造作に掻き回す。己で気まぐれに切り揃えた乱雑なベリーショートは、眉間に引き絞られる富士額を引き立たせ、浮かぶ汗が流れ落ちる様子まではっきりと見せた。暗闇に浮かぶ象牙色の肌はアジア圏の肌色を思わせずあまりにも透き通っている。生まれ持つ黒髪と合わせて視界に納めようものならコントラストに誰もが息を呑むだろう。肯定とばかりに野犬の遠吠えが未明過ぎの闇夜に響く。は男らしい大きな掌を眼前に広げ見詰めると、盛大に溜め息をついた。

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