第1章 第1章 開幕
今日も1日が終わる。
日々睡魔と戦う私は、帰り道が凄く好きだった。
いつもの道でも、遠回りしても近道してもいい。
知らない道を歩いて、少し寄り道するのもいいだろう。
今年高3になった私は、もう既に高校生活に幕を閉じようとしていた。
一年とは、特に高校は早いモノだ。
どちらかと言うと、ゆっくりのんびりしている方が好きだったが、高校が終わると思うと、それはそれで少し開放感がある。
そして今、知らない道を歩いている。
自分の影を見つめながら、先程学校で友達と話した内容を思い出す。
「…『願い』か」
そう、十二大戦。
干支の代表が殺しあう物語。
誰もが平等で、不利な話だったと私は思う。
優勝者の寝住が叶えたのは、『記憶を消す』事だったはず。
忘れるとはそう言う事だ。忘れるというのは、本来思い出すことも出来るが、この物語では訳が違う。
『忘れさせてくれ』と願えば、それは一生思い出すことのないモノになる。つまり、『記憶を消す』事と意味はそう変わらないのだ。
思い出さなければ意味がない。
友達は寝住に凄く同情してたな…。
見てるこっちがおかしくなりそうだったって。
……私なら何を願うだろう。
新しいベットが欲しいとか、次のテスト赤点回避とか、まあ考え始めれば色々出てくるよね。
けどやっぱり、考えの先にあるのは、辿り着く先は一緒だ。
私が願うのは
私が叶えたい
たった一つの『願い』はーーーー
「その願い、本当に叶えてみたくはありませんか?」
…しまった。考えすぎて、自分が何処を歩いているか分からなくなってしまっていた。
それより、この男は誰だろう。
どう考えても場違い、いや世間離れしてる格好だ。
というか、何故私の考えている事が?
誰、貴方は誰。
…けど、何処かで聞いた事、見たことのあるような。
そんな感じがしてならない。
違和感というか、しかし私の親戚にこんな変人はいない。
何処だ、何処で見た。
何処で聞いた。
何処で知った…私の願いを。
「はっはっは。お嬢さん、随分困難されていますね。それは自然の事です。私と貴方は生きる世界が違うのですから」
…は?
生きる世界。
そこで彼に対する疑問の糸が、一気にほつれた。
貴方はーーー
「…ドゥデキャプル」
そう言えば、彼はニヤッと不気味な笑みをした。