第5章 学園
あれから、カナとスザクは一緒になって洗い場でいたずらされたスザクの体操着を洗った。
幼少期ぶりの水仕事で、スザクの足を引っ張ってしまったが、努力の甲斐あって、描かれていた文字は消すことができた。
「ありがとう、カナ。君のおかげで助かった」
「ううん、友達だもん。当たり前でしょ?」
「友達…僕はカナに嫌われてるものだと思ってた」
「え?」
はは、と苦笑するスザクにカナは首を傾げた。
どうしてそんなことを思われているのかわからなくて、カナは記憶を辿る。
「ほら、今朝。一瞬目があったのに君はすぐに逸らしただろ?」
合点がいき、あぁと一言カナはつぶやいた。
先日の一件を思い出し、自分のことを思い出さないスザクに対して、なんともいえない気持ちからそらしてしまっただけだ。決して嫌いなんかではないのに…
「あれは、別に…ほら、いきなりでびっくりして…恥ずかしかったし」
「そうなの?…でもよかった、カナに嫌われてなくて」
胸に手を当て、大げさに胸をなでおろして見せるスザクにカナは笑った。
「ごめんね?本当に嫌ってないから」
「わかった、ありがとう。それに君が僕と仲良くなりたいっていってくれた時、すごく嬉しかった」
「うん…スザクのこと大好きだよ。…スザクみたいな人、嫌いになれっていう方が無理」
「え…」
えへへとカナが笑って見せれば、スザクは驚きから目を見開いてカナをみた。
スザクの反応に、自分の言葉の大胆 さにはっとしたカナ はそのまま慌てて言葉を続ける。
「あ、変な意味じゃなくて!
嫌う理由がないのにスザクさんを嫌いになれないよってこと!」
「スザク、でいいよ。…なんだ、びっくりした。…それとカナ、あんまり僕以外にそういうことは言わないで」
「え?」
「君にそう言われて、誤解しそうになった」
「なっ」
茶目っ気に笑ってそんなことを言いのけるスザクにカナは顔を赤く染めた。