第17章 失った記憶、失くならない記憶
吉原の其処彼処に立ち並ぶいかがわしい看板や、仲睦まじく歩く男女に銀時は呆然としていた
「な…なんなんですか、ここは。こんなところにも僕は知り合いがいるんですか?」
「銀ちゃん、記憶がなくなってだいぶヘタレになったアルな。前までなら鼻の下伸ばして、デレデレしてたアルよ」
「か、神楽ちゃん!余計なこと言わなくていいから…っ!」
未来を気遣い慌てる新八だったが、未来は神楽の話に便乗する
「思い出した!昔もよく男の子たちだけで遊郭とか行ってたよ。そうそう、確か辰馬くんから聞いたんだけど…」
「銀さあァァアアん‼︎」
未来の声をかき消すほど、遠くから聞こえてくるその声の主は晴太だった
「なんじゃ、記憶喪失と聞いたが見た感じはなにも変わってはおらんな。まあ、ちと目と眉が近くなったくらいか」
晴太の後ろから月詠も歩いてきた
「いやいや、そんな呑気なこと言わないで下さいよ」
「この人たちが僕の知り合い…ですか?」
「そうアル。晴太とつっきーネ!」
「つっきー…?」
目と眉が近いせいで、いつもより凛々しい眼差しが月詠を捕らえる
「き、貴様につっきー呼ばわりさせる覚えはない…っ」
銀時の視線に月詠は一瞬ドキリとし、ほんのり染まる頬を誤魔化すように銀時にキツク返す
「つっきー?」
様子のおかしい月詠に神楽が声をかけるが、目を合わせず後ろを振り向き、来た道を歩いていく
「行くぞ。日ノ輪が待っておる」
未来はそんな月詠の様子を見逃さなかった…