第7章 噂話
「十三番隊第四席、夢野萌です」
午前の業務中の萌は六番隊執務室にやって来ていた。中から許可の声がし、書類を手に扉を開ける。
「お、萌…」
「お疲れさま」
恋次がやや嬉しそうにこちらを見る。一言だけ挨拶を交わし、すぐに萌は一番奥の席に向かった。
「朽木隊長、お疲れ様です。こちらの書類が混ざっていましたので届けに参りました」
封書を受け取り中身を確認すると、白哉はいつもと変わらず落ち着いた振舞いで静かに応えた。
「…そうか。わざわざご苦労だった」
「いえ、では失礼します」
この間の件もあり、書類を渡しがてら彼等の様子を見に来たのだ。
「恋次、頑張って」
「お、おう…」
声を掛けると、もう去ってしまうのか、という風に戸惑った反応を見せる恋次。白哉が規律に厳しい人だということは分かっていたため、そのままあっさりと部屋を後にした。無駄話などすれば余計に恋次の立場を悪くする。
仕事中とはいえ、静かな室内だったな…早く打ち解けるといいけど。
午後の休憩時間になり、たまにはと足をのばし食堂で一服することにした。
女性隊士達の話し声が近くの席から聞こえてくる。その会話に修兵の名が出てきて、萌は思わず耳をそばだてた。
「訓練の後にね、質問あるんですけどって言って。そしたら凄く丁寧に教えてくれて~」
彼女達はどうやら九番隊所属の隊士らしい。修兵を誉めているようだ。
「手とかも触れちゃって~、もうすっごく格好良くて眩暈がした~」
「ええ~触ったの?ずるーい!」
…やっぱり凄く人気なのね。何となく解ってはいたけれど。
修兵が隊士達から慕われていることは嬉しいが、少し複雑な気分だ。
「話すとすごく優しいよね。何でも知ってるし頼り甲斐あるし」
「うんうん、副隊長ってお兄ちゃんタイプだと思う!甘えてみた~い!」
萌はそっと、他愛のない噂話が続けられる食堂をあとにした。