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魔界皇子と魅惑のナイトメア

第1章 拝啓赤き月へ



仕事を終えたサラリーマンや、部活帰りの学生達が渡る横断歩道橋を見渡している者がいた。
その者は白い着物を着ていて、左の腰元には日本刀と木刀が携えている。
短髪の黒髪に黒い瞳。前髪の隙間から覗く瞳が一瞬鋭く光り、周りを見渡していた視線は不意に暗い空に向く。そこには怪しく光る真っ赤な月が浮かんでいた。

「なんだ? あの月……」

誰かが呟く。それに反応したのか、1人また1人と夜空を見上げ始めた。

「……おいおい、めんどう事は勘弁してくれよ」

そんな言葉も虚しくスマホが鳴り響く。


いやだ、出たくねえ、これ出なくていいよね? だって絶対ろくな事頼まれないもの、いやな予感しかしないもの!


無視をし続けるが相手も我慢強いのか、着信が鳴り止まない。

「おい」
「ん?」

振り向いた瞬間、顔面に拳が当たり痛む顔を両手で押さえて悶絶すると、頭の上で怒り気味の声が降ってきた。

「さっさと電話に出ろや!」
「え、なんの事? 電話なんてきてないんだけど」
「いや、きてんだろ! 今まさに着信鳴ってんだけど。お前この期に及んで嘘ついてんじゃねえ、あと電話かけてるの俺な」
「なんだよ。お前か……ならいいや」
「よくねえんだよ」

頭を鷲掴みにして力を入れる。

「いででで、潰れるっ頭潰れるーっ!」
「マジでその使えない頭粉々にしてやろうか?」
「まあ、いい。早速本題に移るが……
それにしても今日の月は異様だなあ」
「ああ、お前もそう思うか、そんで用魔さんよう、この月の事調べろって電話してきたんじゃねえの?」
「……違う」
「て、違うのかよ!」
「ああ」
「なんだそれ、上の人間もこの異様な月の事は無視な訳?」
それは俺も気になるとこだが、上の指示もなきゃなんもできん。相良お前が勝手に調べると言うなら止めねえけど」
」ふっ冗談言うなよ。そんな金にもならん事するわけねえだろ? 指示されれば別だけどな」
「はっお前らしいわ」
「で、なんの用事だった?」
「ああ、そうそう、不思議な気配のする女と擦れ違ったんだ。この辺通らなかったか?」
「さあ、知らん」
「もし見かけたら取り押さえてくれ」
「え、ちょっ!」

用魔はそう言って駆け出す。

「悪いなじゃあ頼むわあ」
「おい…………まだなんも言ってないんだけど」

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