第5章 契約と思惑
これは天月がフェンの部屋に来る前のこと
「やあベビちゃん、魔法の調子はどう?」
「なかなかお酒に変えることができなくて……」
「俺に貸してみて」
「はい」
フェンはコップに手をかざしもうできたのか、白い液体が入ったコップを差し出す。
「はい。できたよ」
「あ、ありがとう……ってこれ牛乳?」
「ベビちゃんにはお酒はまだ早いよ」
葵は不服そうにしながらフェンを見る。
そんな葵の視線を受け流しながら、天月のことを聞くフェン。
「今日もまだ帰ってきてないの?」
「はい」
「そう」
フェンは一瞬残念そうに睫毛を伏せるが、すぐ笑みを浮かべた。
フェンは自分の部屋に戻ると、急いで小説の続きを書き上げる。締め切りまでもう時間がない。
(瞼が重たい。このまま寝てしまおうか。ベットにいくのもめんどくさい)
書き終えた頃には日にちが変わりそうになっていた。
(天月ちゃん来ないかな)
そう思っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「夜遅くに申し訳ありません。天月ですが」
重い身体にムチ打って座っている椅子から立ち上がり、よろよろ歩きながらドアの前まで向かう。