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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第15章 練習試合 対音駒高校戦





『……ぇ?』


ふと足元に落ちていた視線を上にあげると、蛍が私の顔を覗き込んでいた。そんなことにも気づかなかっただなんて。
でもどうしてだろう、頭も全然回らない。


「ちょっと止まって。」


蛍はそう言いながら私の腕をつかんで止めると私のおでこに手の平を当てた。触れたその手のひらが何だか熱い自分の身体には冷たくて心地いい。


「…あつっ。ちょっと、何か変だと思ったら熱あるじゃん。何で言わないのっ。」

『ねつ?』

「もしかして、…気付いてなかったの?」

『うん。』


無意識に自分の手のひらを眺めて、グーパーグーパーと手を動かしてみる。あまり力が入らない。
回らない頭で、ふらふらする視界も、この重い頭も熱のせいだったのかと納得する。
熱があると、そうわかってしまうと余計体が辛くなるのは何故だろう。重い頭。グワングワンと回る視界。
どうしようも無くなって、目の前にある蛍の服をぎゅっと掴んだ。


「…ちょっと、本当に大丈夫?…家まであと少しだから。頑張れる?」


家の近くの赤い屋根のお家が蛍越しにもう視界に入っている。
家に帰ってしまえば、今日は家にお母さんがいる。
大丈夫。大丈夫。
もう少しだけ歩けばお家に着く。


『うん、だい…じょうぶ…。』


蛍に心配を掛けたくないし、迷惑なんてもっと掛けたくない。
足よ動け動けと思うのに全然思うとおりに動いてくれないし、体がふわふわとする。
無意識に蛍の服を握る手に力が入る。
目の前にいる蛍が私の腕をつかんで支えてくれているのがわかる。大丈夫。迷惑を掛けたくない。家まであと少し頑張って歩かなきゃ。


『…がんば…る。』


服を掴んだ手を放して、重い足をなんとか動かして一歩を踏み出す。
けれど、その踏み出した足がまた地面にしっかりと着いたかどうかもわからないまま私の意識はそこでプツリと途絶えてしまった。



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