第15章 練習試合 対音駒高校戦
「、早く奥に乗りなよ。泣いた顔、見られたくないデショ。」
合宿からの帰りのバスに乗り込む時に、そう言って私を奥の席の窓際へと導いて隠してくれた蛍。
隣に座っている彼の相変わらずのその心遣いが、申し訳なくもとても有り難かった。
ゆらゆらと揺られるバスの中、開けた窓からフワフワと流れ込んでくる心地よい風に当てられて、どうしても眠気が襲ってくる。
寝てていいよと声を掛けてくれた蛍の言葉に甘えて目を閉じる。
私はあっさりと眠りの世界へと落ちていった。
「、…。」
『んっ。』
どれくらいの時間眠っていたのだろうか。
気持ち良い眠りが、蛍の声と、とんとんと優しく肩に感じた衝撃によって覚醒していく。出発した時よりも、幾分も暗くなった空が目に入る。窓から入る風も、心無しか冷たく感じる。
バスに乗る時よりも、何だか重くなった頭に手を当てて、それでもそれを気にしないようにしてバスを降りた。
今日はそのまま解散するようで、軽い挨拶としっかり休むようにとの声がけの後すぐに皆帰路に着いた。
いつも通り学校からの帰り道を山口君と蛍と一緒に歩いていく。
山口君が合宿のことを蛍に話しているのを横で聞きながら、さっきよりもどんどんと重くなってくる頭にまた手を当てる。
今日はいろいろ考え事をすることも多かったし、泣いてしまったこともあってこんな風に調子が悪いのだろうかと考える。
「さん?どうかしたの?」
ボーっと歩いていると、ふと山口君にかけられた声に足を止める。
気付けば、2人ともこちらを見ていた。
首を傾げてみると、山口君が言葉を続けた。
「声を掛けたんだけど返事が無かったから。…どうかしたの?」
『…ぇ?…あ、ごめんね、ボーっとしてて…。』
「大丈夫?」
『あ、うん、大丈夫。』
心配そうにこちらを見ている山口くんに、慌てて返事を返す。
「そう?ならいいんだけど。」
山口君はそう言うと、止めていた足を動かした。
それに倣って私も足を動かす。
大丈夫とは言ったものの何となく、足まで重くなってきたような。
いつもの場所で山口くんと別れて蛍と2人で家までの道を歩く。
頭はどんどん重くなってくるし、足もふらついてきた。そんなにも疲れていたのだろうか。
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」