第1章 路地裏の闇
「おい、???!起きろよ!!」
ーパンッ!
「起きろって!」
ードカッ!バキッ!
「ちっ、起きねぇよ...。うぜぇなぁ。」
「ほんと、いやねぇ。」
「そろそろ酒切れるな。また盗ってくるか。」
「そうしましょ。」
パタパタ.........。
...痛い。もう嫌だ...。私は長く伸びた黒髪を地面に垂らしてゆっくり起き上がった。
ここは人なんてほぼ絶対通らない暗い路地裏。
そもそも知ってる人なんてそうそういないだろう。
私は...いや、名前なんてどうでもいい。
そんなことよりもこの環境を...いや、人生をどうにかしてほしい。
さっき私を殴ったのは"親”だ。親はろくに働きもせず、家賃を滞納して夜逃げ。たまたま見つけたこの路地裏で物を盗って生活している。私を一晩知らない人に売った事もしばしばある。だから、こんな人生いやなんだ。女だからこの前の夜みたいな事があるんだ。女だから自分の身を守れるほどの力も無いし、抵抗も出来ないから、だから...。
そんな風に考える毎日だ。きっと一生変わらない。
...いや、それより今は生きるための食料を調達しよう。
考えても無駄なんだから。
食べ物を盗りに防犯カメラの死角を把握したコンビニに行った時だった。こんな話が聞こえてきた。
「○○君いいよね!運動も出来て勉強も出来て、しかもイケメン!しかも前転びそうになった所を助けてくれたの!男の子だから頼りになるし!」
「でも皆集まっててなかなかお目にかかれないと。」
「そう!でも小さい事にも気が使えるし。告白してこようかなー!」
...運動が出来て、勉強が出来て、イケメンで、人を助けるだけの余裕がある。
そんな事が出来たら皆愛してくれたのだろうか。
そもそも普通の生活も出来ない私は愛される事など無いのだろうか。
怒りと不安が入り交じり、複雑な気持ちになった。
私は八つ当たりでいつもより少し多く食べ物を盗った。