第3章 見知らぬ世界
『……クマ?……(おかしい、今確かに声が聞こえたはず)』
振り返ると視界に白い大きなクマが立っており、何故此処にクマが?とも思ったのだがとりあえず今は声の主を探すべく辺りをキョロキョロと見渡すも人の姿は見当たらない。
「……あ、あの~…聞こえてる?」
『???聞こえているけど……って……え?』
再び聞こえてきた声に返答をしながら姿を探すがやはり見つからず白クマがポツンと立っているだけだ。
まさかとは思うも少しの間じっと白クマをじっと見つめてから恐る恐る口を開く。
『……もしかして…さっきから声かけてきてるのって……君?』
「そうだよ!は~…やっと反応してくれた。ボクの事見えてないのかと思ったよ!」
『(クマが喋った!?…や、まぁ喋る狼やネズミも居るわけだから何もおかしな事じゃないんだけど…)だ、大丈夫…見えてるから…うん…』
「それなら良かった!それにしても君ってすごいね!大抵の人は初対面でボクが喋ると驚くか怖がるかがほとんどだもん」
喋るクマに対して驚かなかったことがよほど嬉しいのかニコニコ……正直表情がイマイチ分かりにくいが、声のトーンからして喜んでいるのだろう。
とにかく嬉しそうに話す彼、いや…クマ?…もう面倒なので白クマの姿を観察するように見つめ続ける。
『……ところで白クマ君、此処はいったい何処なんだ?船の上ということは分かるんだけど…』
「あ、ボクはベポっていうんだ!よろしくね!それから此処はハート海賊団の船の上だよ~」
『自己紹介どうも。私は雫……って、え……海賊?(何故海賊の船に乗ってる??)』
白クマの彼はベポというらしいのでこれからはそう呼ばさせてもらうとしよう。
ベポが言うにはこの船はハート海賊団という海賊の船で、今現在航海中ということ。
しかし彼が言う事が正しいのであれば彼とその仲間が私をこの船に乗せたということになる……が、目の前の彼がそんな悪どいことをするだろうか。
『あー…その、この船が海賊船ってことは頭…船長が居るはずだよね?その人と話がしたいんだけど』
ベポ「船長?いいよ!ちょっとま「オイ、ベポ…これはいったいどういう状況だ」あ、船長!」
私の頼みに頷いてくれたベポの背後から聞こえてきた第三者の声を耳にして彼が船長なのだと瞬時に理解した。