• テキストサイズ

愛玩彼女

第17章 エンディングのその後は


『そんなにひとりがいいならご自由に』



激甘に溺愛してきたかと思えば。
こんな風に突き放す。
ふたりの言動に、いちいち振り回されてる。
だけど。
売り言葉に買い言葉。
とは良く言ったもので。


『遠慮なく使わせて頂きます!!』




と、隣を出たのはわずか数時間前。




左右が逆なだけで全く同じ作りのこの部屋。
もちろん広さも同じ。
3人で食事するだけで十分な広さなこの空間。
もともと狭いアパートに家族5人暮らしだったあたしには広すぎるわけで。
静まり返った空間は恐怖さえ覚える。



7時。


ご飯、食べたかな。
ご飯は一緒に食べるよね?
迎えこない?
出かけた?



……怒った?



ひとりがいいわけじゃ、ない。
違うの。
あんなことが言いたかったわけじゃ、なくて。
離れたかったわけでも。
ひとりの時間が欲しかったわけでも、なくて。



怖かったんだ。



日に日にふたりに溺れていく自分が。
ふたりなしの生活に耐えられなくなることが。
だから。

「………っ」


馬鹿だ、あたし。
そうじゃない。
自分が変わっていくのが怖くて。
恥ずかしくて。
素直に、慣れなくて。
どーしよう。
怒らせた?
あたしはもう、必要なくなった?
呆れた?



こんなにももう。
ふたりのいない生活に耐えきれなくなってたのに。
生活の、一部になっていたのに。



恥ずかしくて。



まっすぐに想いを伝えてくれるあの意地悪な双子に、素直になれなくて。









「來」







余計なことばかりを考えるこの静寂した部屋に訪れた、聞きなれたバリトン。
それはガチャン、と、重いドアを軽快にあける音と共に、あたしの耳へと届いた。
/ 280ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp