第3章 ブルームーン 【伊達政宗】 《R18》
安土から離れて数週間が経とうとしている。
思いもよらないタイムスリップ、信長様をはじめ名だたる武将達との生活、戦───
そんなめまぐるしい日々を経て運命の相手と恋に落ちた私は今、奥州にいた。
「ねぇ、このお皿あっちに置いていいの?」
「ああ。ちなみに小鉢類はその下の棚に置いてくれ」
「うん、わかった」
厨にて、水気を拭き取ったお皿を整頓しながらちらりと横目で流し台の方を見る。
“後片付けをするまでが料理だ”
そう言って食器を洗う彼───政宗。
彼こそが、私の運命の人。
安土での役割を果たした後、私は政宗に連れられ青葉城にて一緒に暮らしている。
「今日のご飯も美味しかったなぁ。政宗のことだから、明日の献立ももう決まってるんでしょ」
「勿論。明日の主菜は鰤大根だ」
「わあっ、美味しそう!楽しみ!」
政宗が作る料理はどれも絶品で、ハズレがない。
いつも傍らで調理過程を眺めているのだけれど、絶妙な味付けの仕方や手際の良さには女の私でも感嘆のため息が出るほどだ。
「私も政宗みたいに料理上手になれたらなぁ。そしたら自信をもって披露できるのに」
「自信?そんなもん必要ない。今度作ってくれ」
「でも、ほんとにたいしたものしか出来ないよ?可もなく不可もなく…みたいな」
「料理ってのはなぁ、味がどうこうよりも心を込めて作ることが一番大事なんだ。
俺は茅乃の料理食ってみたいけどな」
「心を込めて…そっか。そうだよね。
じゃあ今度思いきって作ってみようかな」
「楽しみにしてるぞ」
そう目を細める彼の言葉が嬉しくて、思わず頬を綻ばせる。
以前戦場で争っていたのが嘘のように穏やかな空気が流れる、そんな夕餉後の夜───。