第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
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「どうだ、まだ痛むか」
「ん…ちょっと…。でも幸せだからいいの」
初めての契りを交わした後───
温かな腕の中で余韻に浸りながらそう微笑む。
痛みはまだほんの少し残ってはいるけれど、彼と繋がれた証だと思うとこの痛みさえも愛おしい。
「───もう夜が明けるな。早いものよ」
ちらりと障子窓の方へ目をやった信長様は、それからまた私を見つめ直し……
「朝方、使いの者を貴様の故郷へ放つ。無論、貴様を帰す気はない」
「それは、つまり…」
「正式に縁談成立の報せを出すという事だ。──俺の奥となれ、茅乃」
「……!」
形だけではなく本当の意味で彼のそばにいられることが嬉しくて、すぐさま二つ返事で答えた。
私、やっと心から好いた人のもとへ嫁げるのね。
──しかしこれで一安心するのはまだ早いわ。彼と私の物語はまだ始まったばかりなのだから。
「安土に来てから色々な出逢いがあって、夢が叶ったわ。でも…まだ成し遂げてないものがあるの」
「ははっ、まだあるのか。して、その成し遂げてないものとは?」
「──貴方の夢よ」
信長様の目が見開く。
「奥としてこれからもずっと貴方を支え続ける。貴方が創り上げたものを守ってみせるわ。
──この私が、貴方を天下人にしてあげる」
鼻高々に言い放つと、
見開いた目がふっと細くなって。
“つくづく高飛車な女だ”───
そう微笑って、生意気だと言いたげな口付けを私に落とした。
完