第1章 1
2.目覚めたそこは
「………っづ、いてて…」
全身に鈍い痛みを感じて目が覚めた。
…ここはどこだろう、まるで西洋のお城のようなところだ。
目の前にそびえ立つ雄大な城に若干圧倒されつつも、どうにか起き上がる。
確か事故にあったはずだ。
ライブ終わりの夜、街灯につっこんでいったバンに乗って。
だが、どれだけ目をこらして周囲を見渡しても、雄大な自然、原っぱ、森。
天国か?
死んだな、これは。
ふふ、と1人謎の笑みを浮かべながら、無意識にタバコを探してしまう。
くそ、やっぱ引き換えしてタバコ取りに行くんだった。
いや、待て、もしあの時私がタバコを取りに行けば助かってたんじゃないか…?そもそも、信号が青になったことを伝えなければ…後続車はいなかったのだから…
時すでに遅し、その言葉通りではあるがみるみる心が苦しくなってくる。
「そもそもマネージャーたちはどこなんだ…?」
ポツンと放り出されているのはロゼ1人だけである。
もしここが本当に天国ならば、むしろ1人であることは喜ばしいことではあるが。
その場で立ちすくんでいてもどうしようもないので、草をかきわけ城へと近づいていく。
近づけば近づくほど城がでかい。
「はー、でっか…、ほんとに神様とかいそうだな…」
見上げる首が痛い。
ロゼは感嘆とも不安ともとれるため息を1つつくと、ようやくたどりついた門扉に手をあてる。
とても重厚そうなその扉は、軽く押しただけで埃っぽい音を立てて開いてしまった。