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【FHQ】勇者の物語

第10章 工業の街


俺たちは3人部屋と2人部屋の2部屋を借りた。
高くもなければ安くもない宿だ。

俺は2人部屋の方のベッドに寝かされ、ケンマが看る。

イワイズミさんとカゲヤマは、コインを売りに行くついでにアオネさんも探してくると言って宿を出た。

「ショウヨウ、診てもいい?」
「うん!」

俺は目を瞑って、ケンマの魔法に身を委ねる。
ケンマの治癒魔法はあったかい。

「目、開けていいよ」
「どうだった?」
「出発時より随分良くなってる……これなら完全に痺れが取れるかも」
「ホント!?」
「この街で良い医者に会えれたら、だけどね」

ケンマの言う通りだ。

クロオが俺にかけた魔法の効果を完全に消すには、伊達街の高度な科学技術が重要になる。

「なんか、腹減った」
「そろそろ昼時だからね。売店で何か買ってくるよ」
「うん!わかった」

ケンマは鞄を持って部屋を出ようとしたが、俺を振り返る。

「ショウヨウ、知ってる声でも知らない声でも、何度もノックをされても、絶対、扉を開けてあげてはダメだよ。自分で開けさせてね」
「え?なんで?」
「ショウヨウは『動けない』から。約束」
「うん!約束!」

ケンマはわずかだけど口角を上げて、部屋を出て行った。
扉が閉まると、急に部屋が静まり返る。

俺は枕元に置かれた、ヤチさんからの餞別を見る。その奥のテーブルには、俺が着ていた鎧一式と勇者の剣が置いてある。

絶対、勝つから。

何故かわからないけど、そこにある『2人』の思いには、絶対答えないといけない気がした。

腹の虫がうるさいなあ。


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