第1章 思い
─────自宅で私達は揉めていた。
「ねぇ、蘭丸ってば!お願い!!」
「駄目だって言ってんだろ!聞き分けのわりぃ奴だな。」
「ひどっ!そんな事言わなくてもいいでしょ!?ちょっと気になったからお願いしてるだけじゃん!」
ねぇねぇと蘭丸の服の裾を両手でつかんで後ろを延々とついて行く。
うるせぇと聞く耳を持たずにズンズンと歩く。
「ねぇ、蘭丸お願いだってば!今日だけ!一生のお願い!!」
掴んだ手を離して急ぎ足で蘭丸の前に回り込み手を合わせて頼み込む。
「しつけぇ・・・ッ!!」
同時に蘭丸にガバッと抱きしめられる。
通常よりかなり強めに肩より上をホールドされる。
蘭丸の胸に顔を押し付ける形になり、息苦しくて蘭丸に離れて欲しくて、肩をポカポカと叩く。
「・・・ふっ。懲りたか?ばーか。」
スっと解放したと思うと私の頭をポンポンとして蘭丸がちょっと出てくると言ってでかけてしまった。
ポンポンされた頭を自分で撫でながら残念な気持ちになる。
「1回くらい言いじゃんケチっ」
そっとポケットから親指サイズの瓶を取りだり眺める。
シャカシャカと上下に降るとキラキラとした黄色い粉末が瓶の中で浮遊する。
「私の誕生日だから、小さな事でもわかったって・・・言ってくれると思ったのになぁー。プレゼントなんて要らないから、一緒にいる時間が欲しいだけなのに・・・まーた出掛けちゃうんだし。オフにしてくれたのはすっごく嬉しいから楽しみにしてたのに午前中は出掛けちゃうんだもんなぁ・・・。」
ちょっと不貞腐れながらブンブンと首を振る。
ごめんね蘭丸・・・。忙しい中わざわざ時間取ってくれたのに。蘭丸の自分の時間を私が無くすような事しちゃダメだよね。
一緒に暮らしてるだけでも幸せなのに、ついつい欲が出てしまう。
軽く深呼吸をして、私も買い出しに行くことにした。
「蘭丸の大好きな食べ物沢山作って、その顔いっぱい見ようっと!」
考えるとワクワクして来て、気合が増す。
足早に私も家を出た。