第2章 シャボンディ
「…飽きた。」
「早ェよ。」
オークション開始から数十分、明らかに疲れの色を見せ始めた。そこに冷静かつ的確なツッコミを見せるモコモコ帽子の顔も疲れた顔をしている。
「あんたも疲れてんでしょ?顔死んでる。」
「バラバラにするぞ。」
「ごめんなさい。」
人間の値段をつける声、落札のカンカンカンという耳障りな音が響く。
「同じ人間をよく落札しようなんて思えるわね。」
「そうする事でしか楽しめねェんじゃねェか。特に"天竜人"さんは。」
「ふーん…」
"天竜人"、世界貴族と呼ばれ逆らえば海軍大将が来る。
そんな事知らない人はいないだろう。海賊の中では暗黙のルールだ。
だからどんな悪事を働いても、人を殺したとしても誰も咎める事は無い。
「海賊よりタチが悪い。」
「同感ね。」
見事もめる事なく意見の交換をし合った船長達を見てクルーはホッと胸を撫で下ろす。
「うわ、あれって舌を噛んだ?」
「あぁ…だがあれくらいじゃ死なない。少し痙攣してたが生きてる。」
「さすが医者。絶対死んだかと…」
周りはざわついているにも関わらずこの2人は冷静に状況を把握している。
仲がいいのか悪いのか、というのはクルー達の最大難関である。