第3章 一方的な片想いだ
『げ、まだ練習するの?』
公園にあるコートに着くなり、花子は怪訝そうな顔をする。
全く、誰のせいだと思っているのだ、とオレのイライラは増すばかり。
そう、機嫌が悪い理由はこいつにあるのだ。
〜3時間前〜
部室の前を通ると宮地さんとキャプテンの声が聞こえてきた。
「全く緑間のワガママには、呆れるな。」
「高尾と山田がいるからなんとかなってるようなもんだ。」
「まぁでも、悪くないよな。」
「何がだ?」
「山田、可愛くないか?」
通り過ぎようと思っていたが、花子の話題になり、バレないように耳を澄ました。
「結構オレ好みだわ。」
いつも厳しい宮地さんのデレデレした話は、正直聞きたくないが、その相手が花子となれば話は別だ。
「でも緑間と付き合ってるんじゃないのか?」
「大坪の目は節穴か?あれは緑間の一方的な片想いだ。」
狙っちゃおうかなーなんてふざけたことを吐かしやがる。
オレがイライラしてる、その理由は、宮地さんが花子を女として見ていることではない。
そう、片想いを言い当てられてしまったこと、そして自分が花子を女として意識してしまっていることにイライラしているのだ。
とどのつまり、触れたい、壊したい、という本能を今必死に練習することでどうにか紛らわそうとしているのだ。
結局、理性を取り戻した頃には1時間程度経っていた。
『真ちゃんでも緊張するんだね。』
花子はこの行動を明日の試合の緊張だと思ったようで、いつもの的外れな見解も今回ばかりは助けられた。
そしてオレは、花子を家まで送り届けたら、早く寝よう、そうしようと心の中で誓うのだった。
(『アイス食べて帰ろ?』)
(「・・・・・。」)
(『真ちゃんのおごりね。』)
(「・・・・・。」)