• テキストサイズ

溺愛執事の恋愛事情

第4章 お嬢様の憂鬱


「………ハイセは?」


「おかえりなさいませお嬢様。和泉さまは旦那さまと外出されました」


「………」




また、パパ。


いつもいつもハイセをあたしから取り上げて。
ハイセはあたしの執事なんだからっ。




「……お嬢様!?」



「部屋!!ハイセ帰って来たら来るように伝えて!!」






ハイセがいたら下品だなんだと小言でも言われそうなくらいに大股でドスドスと階段をのぼり。
ついでに力任せに自分の部屋の扉を閉めた。





「……ハイセの、ばかっ」





















「……さま」


コンコン、と、遠慮がちに扉を叩く音で意識が目の前へと浮上してくる。

今、何時。


寝ちゃったのか、あのまま。


「お嬢様、お夕食の準備が整いました」
「ハイセは?」
「本日は旦那さまとお食事だそうで、帰りが遅くなるようです」


「………っ」


「お嬢様?」


「いらないっ!!」


「入ってもよろしいですか?」


「いらないったらいらないの!!あっち行って!」





枕元に置いたスマホを手に取るけど、ハイセからはなんの連絡もない。



「………っ、絶対、許さないんだから!!」









カチ カチ カチ カチ




いくら時計とにらめっこしたところで時間が早く進むわけもなく。
イライラがつのるばかりだ。



自室を出れば、キッチンからはほのかな明かりがついていて。

まだ、誰かいるんだ。


見つからないようにそっと1階へと降りていく。
1階の、1番奥。
ハイセの部屋。
そっとドアを開ければ、机とベッドだけの、殺風景な部屋。
だけど。



「ハイセ……」



ハイセの、匂いがする。




誘われるようにベッドへと横になり、顔をうずめた。
ハイセの匂いが、この部屋にはたくさんある。
ハイセが、いるみたい。


「…………」



無意識、だった。



クローゼットへと手を伸ばして。
ハイセの白いシャツを、手にとる。
ハイセがいるみたいで。
ハイセの、匂いに包まれたくて。

無意識にシャツに、袖を通す。
/ 197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp