第13章 番外編 映画鑑賞はお静かに
『何かご用でしょうか』
『ご用よ!!』
西園寺家のご令嬢なのにこの語彙力。
旦那様が嘆きになるのも必然で。
まぁとりあえず今は考えないようにしよう。
『………映画、見たいの』
『映画、ですか』
『そうよ』
『わかりました。ではお時間調べますので、題名教えていただけますか』
『違うわ。ハイセとここで見たいの!』
『こちらで?』
『そう』
チラリと視界に移り込んだ、テーブルに不自然に置かれたポップコーン。
それと紙コップらしきものにはきっとドリンクだ。
なるほど。
用意したのは彼女たちで間違いない。
先ほどのやたら不自然な笑顔はこれのせいか。
『駄目?』
首傾げての、上目遣いはさすがにダイレクトに下半身にくるからこれ、絶対誰にもやらせないようにしないと。
破壊力。
『ハイセ?』
『あ、ああもちろん、お供致します』
からの。
何故かベッドへとふたり並んでポップコーンなんか食べる意味のわからない構図が出来上がったわけなんだけど。
なるほど。
イチャイチャね。
そんなにイチャイチャしたいなら。
『きゃあああ!?』
ぐい、と。
最近恋仲になったばかりの、愛しい愛しい彼女を抱き上げた。
まぁ、その拍子に指先が掠めた胸の感触は、不可抗力だ。
………たぶん。
だって。
イチャイチャしたいならこっちのが絶対いい。
後ろから。
暴れる皇の身体を抱きしめた。
『お嬢様』
耳元でわざと吐息混じりにそう、呼べば。
ビクン、と肩をすくませ反応する。
『映画鑑賞するのでしたら、お静かに、お願い致します』
【完】