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溺愛執事の恋愛事情

第4章 お嬢様の憂鬱


なんでいつもいつも同じ手にひっかかるのかな。
ああもう。
勝ち誇ったハイセの笑顔がイライラするっ。



「朝食、いかがいたしますか」
「……いらない」
「そうですか」
「………いいの?」
「いらないのでしょう?」
「評価、とかは?」
「お嬢様のご機嫌が直るなら、『くそくらえ』、です」


にっこりと微笑むハイセの笑顔がほんと、眩しすぎて。
これもハイセの計算だって、ちゃんとわかってるのに。
あたしがどんな顔すれば従うのか。
何を言えば素直になるのか。
ハイセは全て、お見通し、なのに。


さっきまでそれが凄く悔しかったはず、なのに。



「………部屋で、食べる」
「かしこまりました」


やっぱり笑顔で一礼しちゃうハイセは凄く、カッコよくて。
なんかもうどうでも良くなっちゃうんだ。



「………早くない、これ」
「ええ、廊下に準備させておきましたから」
「………」



この、手際の良さ。
なんだろう。
やっぱりイライラする。




「あれ、これ……ふたり分?」
「ええ、ご一緒させて頂いても?」
「ぇ、いいの?」
「旦那様の許可はとってあります。ですから、廊下に準備させていただいたのです」
「あ……」


執事である以上、一緒に食卓囲むことはみんなの手前出来ないから。


「ハイセ」
「ん?」
「大好きかも、ハイセ」
「ありがとうございます。ですが出来れば『かも』、なくしていただきたいものですね」
「大好き、ハイセ!!」
「ええ、僕も大好きですよお嬢様」



手際良く真っ白い小さなテーブルへと朝食を準備していくハイセを座ったままに見上げれば。
ハイセも手を止めて、笑顔を惜しみ無くあたしへとくれた。


「では」
「「いただきます」」




「ご機嫌は、直りましたか?」
「ぇ」
「先ほどまで凄く不細工なお顔されてましたけど」

「………っ」


不細工、って。
仮にもあたし、彼女なのにっ!?
怒り通り越しすぎて焼きたてのパンが喉に詰まったじゃない。


「大丈夫ですか」

やっぱり素早い身のこなしっぷりで、いつの間にかその右手には冷水の入ったコップが握られているのだ。
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