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溺愛執事の恋愛事情

第3章 お嬢様、バイトする


あのあと、首筋にはでっかいでっかい真っ赤な痕が残っていた。
いやもう、羞恥を通り越して恐怖でひきつるくらいには。
おかげで誰もが、『虫さされ』だと信じて疑わなかったのだけど。








「変なこと?お嬢様が今朝見た夢、再現致しましょうか?ええもちろん、お嬢様のご希望でしたら何なりと致しますよ?」


朝からいきなり血の気引いたよ、ハイセさん。
さすがね。
南極の氷でも被ったように寒いわ。


だいたい、あたしがどんな夢見たかどーやって知ったのかしら。
ハイセってば、人の夢に入れちゃう能力まであるの?



「………お願いだからお嬢様、朝っぱらからわけのわからない思考回路を繋ぐのは止めて頂けますか」
「なによそれ」
「だいたいわかります、お嬢様の考えくらい」
「言ってみてよ、じゃ」


カチャカチャと朝食の準備をするハイセの背中へと話しかければ。
あきれたようなため息とともに、ハイセは振り返った。


「残念ながら僕には特別な能力などありませんよ」


「!!」



なんでわかったのかしら。

ハイセってば、やっぱり人にはない能力あるんじゃないの、絶対。




「いつからお側にいると思ってるんですか、お嬢様の思考を読み取るなんて、目玉焼き作るより簡単ですよ」
「………地味に恥ずかしいわね、それ」
「今さら何を言ってるんですか、もっともっと恥ずかしいことなら、たくさんしてきたでしょう」



「………」



真顔で朝っぱらから語る内容でもないわね、それ。



「お嬢様」



「………な、何よっ」


近いのよ、いつも無駄にっ。



「真っ赤になられて、何をお考えですか?」


「…….っ」


ふ、って笑って。
ハイセは右頬に触れていた手のひらをす、と引いた。



この、性悪執事っ
今の絶対、わざとねっ





「朝食の準備が出来ました。さぁ早く、着替えて下さい」


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