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溺愛執事の恋愛事情

第1章 神様ヘルプ!


西園寺 皇。
高校生。

父親は世界屈指の経営コンサル社長。
母親は世界に羽ばたくデザイナー。


所謂生粋の、正真正銘のお嬢様、ってやつ。



16年間、いや、記憶に残る限りは切ったことのないキレイな赤茶色の透き通るような髪の毛は、すでにおしりのところまで伸びている。



彼女、とは。
つい先日、恋仲になったばかりだ。







「………誘惑、ですか」
「ええそうよ」
「こんな時間に?」
「そうよ」

「………そうですか」




時々、いや、けっこうな確率で。
この人のやることには突拍子なるものがかけている。



そして大抵。
意味など深く考えずに行動するのだ。



「………っ、きゃぁっ!?」


ほら、やっぱり。
ベッドを覗きこむ彼女の腕をそのまま引き寄せて、ベッドへと縫い止めれば。
驚いたように見開かれるのは大きく揺れるブラウンの瞳。

夜中の3時に男の部屋に『誘惑』にくるならそれはもう、これしかないだろう?

「ハイセっ?」
「はい?」
「お、も、いっ!退いて!着替えて、とは言ったけど脱がせ!とは言ってないわ!」



脱がせやすい服なんか、しかもメイド服なんか着ちゃって、真下から睨まれても俺にはご褒美にしか聞こえないんだけど。
何のご褒美だ?これ。


「誘惑、するのでしょう?」
「そうよ」
「だから、誘惑されてやってるのです」

「ち、がーうっ!」


「………っで!」


目を閉じて。
欲情したままにぷっくりと熟れたかわいらしい唇を奪うまであと、数秒。
あと、数ミリ。


感じたのは柔らかな唇の感触ではなく、て。


後頭部にガツン、と一発星が飛ぶくらいの衝撃だった。


「……………男の部屋にこんな夜中に夜這いしに来て、挙げ句殴る、とはどーいった了見ですか」
「だから、誘惑だってば」

「お玉持って?」


「男を落とすには胃袋を掴め、ママの教えよ」


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