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溺愛執事の恋愛事情

第7章 お嬢様の涙





「失礼します、西園寺様。和泉様がお呼びでございます」
「え?」


ハイセ?
何よ、呼び出しなんかして。
えらいご身分じゃない。



「皇ちゃん」



姫のお祖父様である総裁夫妻との談笑が終わり、バルコニーに視線を向けると。
先ほどまでふたり仲良さげに話していたはずのハイセがいない。
残されたのは、姫のナイトだけだ。



「姫、ちょっとごめん」
「ええ、和泉様によろしくお伝えください」




なんなのよ。
呼び出しなんて珍しいことしちゃって。
しかも人を使って呼び出しなんて。
ハイセらしくもない。
………だけど最近のハイセ、なんかおかしいし。
もしかしてその事と関係あったりするのかな、なんて。
考え事しながらトボトボと着いて、いけば。



「!?」




後ろから急に口を塞がれて。
ツンとする薬品の匂いが鼻を掠めた、途端。
プツンと意識は途絶えたんだ。














それから。
どのくらい時間がたったんだろう。
いきなり降ってきた冷たい液体に、ぼんやりと意識が覚醒した。


「お目覚めですか、お嬢様」

「………だれ?」


「お嬢様に冷水ぶっかけるなんて、失礼いたしました」
「………」


あの冷たい刺激は、冷水か。
確かに濡れた服と肌にはひんやりと肌寒さを感じる。




「この状況で怯えるどころか、その反抗的な目、さすが名家のお嬢様名乗ってないのな。俺は好きだぜ、その目」
「………っ」
「さて、問題」
「?」
「これは、なんでしょう」

「………」


意地悪そうに笑って。
人差し指と親指で掴んで目の前に差し出された小さな丸いもの。

「薬?」

白い、錠剤のように見える。


「正解」

に、と笑って。
さらに男は、歌うように楽しげに言葉を繋げるのだ。

「なんの薬、でしょうか」
「………」

なんの薬か、なんて。
白い錠剤なんてそこら中どこにでもある。
わかるはずもなく、沈黙を続けていれば。
男はさらに、恐ろしい言葉をその笑顔に乗せるのだ。


「1錠で、天国。2錠で人格崩壊するんだって。」




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