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【ヒロアカ】華恋【轟焦凍】

第3章 夏幻[R18]




「轟さん!プロヒーロー到着までにはまだ時間がかかりそうですわ!」
「ああ…緊急事態だ」


声の正体は一人ではなかった。
隣には体育祭で見覚えのある女子。


(夏休みに男女2人でショッピング…)


自分の置かれた立場も忘れて
目の前の光景に
私の心は驚く程に揺れ動いて

犯人が私の首元に顔を埋めてくるのに
気付きもしなかった。


「…アイツは俺が捕まえる」
「え?」
「サポートに回ってくれ」
「ですが…」
「頼んだぞ、八百万」
「…了解ですわ」


それからはあっという間だった。

2人は互いの事を知り尽くしているかのように
"個性"を上手く組み合わせた技で
犯人は成す術なく無力化されていた。

その様をただ見ていた私は
なんて非力で無能。
不用意に使った"個性"は無意味だった。


「お怪我はありませんか?」
「…大丈夫、です。ありがとうございました……」


幼馴染と同じヒーロー志望の綺麗な人。
きっといいパートナーなんだろう。

幼馴染の隣にいるのは
もう私じゃない。


「!大丈夫!?」


友達が駆け寄ってきたことで
綺麗な人は私から離れ
幼馴染が見張っている犯人の元へと


「大丈夫。突き飛ばしちゃったけど、怪我してない?」
「なんともないよ!私はが捕まったのに何も出来なかった…」
「気にしないで?あの人達が無事に救けてくれたから」


2人の方へと視線を向けると
会話をしているようだった。

事後処理は警察の仕事で
巻き込まれた私はここに留まるべきなのか。
聞こうにも近寄り難く思っていると

紅白頭がこちらを振り向いて
近づいてくる。

その姿を眼にした私は
何を思ったのか

逃れるようにして
その場から駆け出していた。

すぐに息が上がり始めて
胸が苦して
鼓動が早くて

足がもつれてしまいそうで
長くは保ちそうにない。

お願いだから
追いかけてきたりしないで

そう思った直後

腕を掴まれて
私の足は急停止する。

久しく見ることのなかった色違いの双眸が
こちらを見つめている気配に
顔を上げられない。


「何で、逃げるんだ?」


こんなにも近くで
掛けられる声に
胸が締め付けられて
息が苦しい。

左手に掴まれた腕に
あの日の熱が蘇って

遠くの方で
蝉達がけたたましく鳴く声が
聞こえた気がした。



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