第11章 キミ色フォルダ Root Green
ニノの呼吸が落ち着いてきたのを感じて、名残惜しく思いながらもそっと体を離した。
もしかしたら解放した瞬間にまた逃げ出すんじゃないかと、ちょっと警戒してたけど。
ニノは手を離してもその場を動かなかった。
「逃げないの?」
「逃げてほしいの?」
「ううん!」
つい聞いてしまったら質問で返されて。
慌てて否定する。
逃げて欲しいわけないじゃん!
やっと捕まえたんだから!
「もし逃げたら雅紀はどうする?」
「どこまででも追い掛ける!」
「じゃあ逃げるだけムダでしょ。それに俺にはもう走る体力なんて残ってないし」
ははっと笑ったニノは本当に疲れた顔をしてて、申し訳ない気持ちになる。
でも俺も引けない。
「ごめん…でも俺、ニノと話がしたいんだ。少しだけ俺に時間をくれない?」
「俺にはもう話すことなんて何もないけど」
無表情で淡々と返されて、ちょっとだけ怯みそうになる。
いや、意地でも怯まないけど。
だって今日伝えるって決めたんだから。
「うん、ニノにはないかもしれない。でも俺にはあるんだ…話を聞いた上で、ニノがもう俺と関わりたくないって言うなら、俺は二度とニノには近付かないから」
俺が本気で言ってることが伝わったのか、ニノの肩がびくりと揺れた。
「だから聞くだけ聞いてもらえないかな?」
想いを込めてまっすぐニノを見つめていたら、ニノは気まずそうに目を逸らして。
しばらく悩んでたけど、最後はこくりと頷いてくれた。